テキスタイル素材編3
天然素材の未来、シルク・ウール・その他
8月30日(土)、INAXアーキプラザにてテキスタイルスクール東京第4回が
行なわれました。

 

 

〜『ウールの七変化』〜
講師:三田修武((株)ミタショー取締役常務)

今回の講座はウールの歴史、特性、そして(株)ミタショーのある桐生産地とウールについ て講議して頂きました。

<ウールの歴史>
紀元前2200年メソポタミアを起源とする毛織物は、ヨーロッパに於いては18世紀のイギリス 産業革命により大衆化した。日本では明治になり生産が開始されたが、日本のウール産業は 原毛を輸入し二次加工するという形で発展した。

<ウールの特性>
ウールは化学構造の異なる二種の細胞組織から成り、波状の縮れ‘クリンプ’がある。又、 表面は鱗状の‘スケール’で覆われており、これら構造上の特徴がウールの繊維特性に大き く影響している。繊維構造の模式図や吸湿性、燃焼性などの実験値を示した表を用いて解説 して頂いた。

<桐生産地とウール>
“ウールは化ける”といわれ、加工段階での変化が大きい。三田氏はその欠点を武器とし、 古くからの絹織物産地‘桐生’で培われた技術との融合により、感性溢れる製品を開発して いる。今回はMoMA(ニューヨーク近代美術館)にて展示、販売されているサンプルを含む 数多くの織物を紹介して頂いた。ウール100%のものやウールと異素材を組み合わせたもの など実際に手に取って見ることができた。


講師:三田修武

〜量産型シルクの美を求めて・先染織物・立体織物・塩縮加工〜 講師:宮本英治(みやしん(株)取締役専務・企画室長)

今回の講座はシルクの種類と機能、先染織物、立体織物、塩縮加工についてです。沢山の製 品を見せて頂きながら講議して頂きました。

<種類と機能>
シルクの種類には家蚕と野蚕があり、野蚕も実際に使われてきた。シルクの機能は従来繊維 として使用されてきたものの他に、非繊維としてクリームやパウダーなどに形状を変化させ 紫外線カット、静菌性、生分解性など、将来的に注目されている。

<先染織物、立体織物、塩縮加工>
宮本氏は、細番手の糸使いや異素材との交織、更に多重織の工夫など、伝統技術と新しい発 想の加工技術を駆使することにより、今までにないオリジナルな製品を打ち出している。 100を超える沢山の製品を実際に手に取って見せて頂いた。

<感想>
これ程沢山のサンプルを一度に見ることのできる機会は大変貴重であったと思う。今回見せ て頂いた数多くのサンプルは、どれも不思議なテクスチャーのものばかりであった。参加者 は、その感触や制作方法に興味津々という面持ちであった。改めて‘ものづくり’には、素 材と技術、更に柔軟な発想が重要であると感じた。                                 (リポート 花田朋美)


講師:宮本英治