TDAテキスタイルスクール大阪 後期第3回

―――プロのデザインビジネス講座―――
日時 12月13日(土)
場所 大阪化学繊維会館
講師 斑目 寿明氏  
コスモテキスタイル(株) 代表取締役社長

   麋山 順證氏  
丸ホームテキスタイル(株)元 会長

12月度関西テキスタイルスクールは 当スクールに協賛していただいている大阪織物卸商業組合(OFT)からお二人の講師をお招きしておこなわれた。斑目氏は現在OFTのファション部門の部会長であり、麋山氏はかつてインテリア部会長を務められた。企業のトップから見た今日の繊維産業についての講演は極めて示唆に富むものであった。

講座1 「経営におけるソフト アジアの中の日本」 斑目 寿明 氏

84年から92年商社マンとしてインドネシア駐在の経験から、ビジネスの違いや海外から見た日本の繊維産業の強みや弱みを指摘された。文化、宗教、職業観が異なる環境下で 行われるビジネスの大変さがうかがえた。特に急速に進む経済のグローバル化の中で東南アジア自由貿易圏の果たす役割は興味深い。決定がスピーディーに進められる各国と、結論の遅い日本のビジネスの進め方や、欧米の企業がデザイン力やブランド力などソフトノウハウを重視し、戦略が明確であるのに比べ、戦略が見えない日本企業の実状に対して苦言とこれからの課題も同時に提示された。我々デザイナーに対しては日本人が考えるほど創造力、感性は悪くない、むしろ評価は高い自信を持つべきだと、激励をうけた。
斑目氏の仕事仲間である川久保玲氏の仕事にふれ、成功要因に卓越した感性と経営手腕を兼ね備え、ステイタス(自己表現)と商品(ビジネス)を両立させることに腐心していることをあげ、世界的評価が衰えない秘密はここにあると指摘される。

日本企業はまじめにモノづくりをするがソフトノウハウの不足が弱点である。デザイナーに期待される事柄は多く、我々にとってチャンスと活躍の場があるように思われた。

講座2 「経営と野球人生」   麋山 順證 氏

麋山氏は現在会長職を退任後、ビジネスのかたわら、45年間に渡り指導されていた高校野球部の監督に専任されている。ビジネスマンと野球部監督の2つを両立してきた経験を基に、仕事に対する情熱や心構えを熱く語られた。参加者は甲子園を目指す球児たちのひたむきな姿勢や、困難を克服したエピソードの数々に、時に感動のあまり涙ぐむ場面もあった。理屈ではなく五感で知ることの大切さは創作活動の基礎かもしれない。

人との競争(相克)と人を育てる(浄化)を両立させてきた情熱の原点と、教えることを続ける中で、自らが反対に教えられることが多かったと体験が紹介され、「できなかったことができるようになる」「友を、志を同じくする人を得る」「フェアープレーの心が育まれる」スポーツが持つ3つの徳目を説く麋山氏の言葉は、我々に対する応援歌に聞こえた。

氏が監督する扇町高校の甲子園出場を祈りたい。   (レポート 鈴木)

斑目寿明 講師
麋山順證 講師