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イベントレポート

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角寿子

TDAでは10月22日(金)環境省の情報提供拠点、環境パートナーシップオフィスEPO会議室において、これからの地球環境を考える 天然繊維「麻」と天然染料 『サスティナブル(持続可能な)・テキスタイル』と題し、NPO法人アースネットワーク理事長、天然染料顔料会議理事でいらっしゃる、角寿子氏に講演していただきました。

環境に配慮した商品開発が世界の常識となった今、改めて「サスティナブル」な素材である天然繊維「麻」に注目し、天然染料についてお話を伺いました。 角氏はご自身の生家が繊維業に携わっておられ、繊維は身近な物として育まれました。染織家として作品を発表されると共に、天然染料顔料ワークショップを世界各地で開催され、現在は北海道医療大学薬学部創薬科学研究室学外研究員として「天然染料の色と効果」について研究しておられます。http://north-indigo.com

 まず麻についてですが、持続可能な資源として、今注目されております。麻とは植物の皮や葉茎等から採る繊維を総称する、日本特有の言葉です。世界各地ではその土地に育つ様々な植物の繊維から多様な麻糸、麻布が作られてきました。

利用する植物の部位によって大きく2つに分けられます。 軟質麻(靭皮繊維)の仲間としては、リネン(亜麻・フラックス)、ラミー(苧麻・からむし)、ヘンプ(大麻)、ジュート(黄麻)、ボウマ、ケナフ(洋麻)、芭蕉など。 硬質麻(葉脈繊維)の仲間としては、マニラ麻、サイザル麻、ラフィア、パイナップル麻、ココナツ麻、マオラン麻、かんとん麻、など。 リネン(亜麻)は人類が最初に用いた最古の繊維のひとつです。チグリス・ユーフラテス川流域では、1万年前から栽培が始まったと見られます。 日本でも縄文時代の地層から苧麻(ラミー)で織られた高度な織物が出土しています。その他ヘンプ(大麻)や藤、琉球では芭蕉、アイヌ民族はオヒョウ、ハルニレ、シナノキ、など、様々な植物繊維が使われてきました。 八重山上布、宮古上布、近江上布、越後上布、小千谷縮などは苧麻で織られています。

○苧麻の特徴は、
 ・抗菌作用        
 ・ 速乾性で雑菌が繁殖しない        
 ・ 吸湿性が高いー体温を下げる        
 ・ 水に濡れるとより強力になる        
 ・ 植物染と相性がいい、 特に沈澱藍による藍染は様々な民族の暮らしをまもってきた 日本で年3回、
  ブラジルでは6回収穫可能 栽培しやすく、布や紙になる等があげられます。

○亜麻、芭蕉、楮、竹         
 工芸品だけでなく、ファッション性や環境性が加わり、一般の商品に応用され、
 さらに研究機関で機能性の研究が進み、様々な分野への実用化が進んでいます。

次に天然染料の色と機能性について

○ムラサキ:
 ・薬用植物分野との協力        
 ・局方にならないものは染色分野で使える。        
 ・国内栽培を増やす。        
 ・掘出して半年までに使う。        
 ・紫根1:布2、5で濃色が得られる。        
 ・今までは、布の3~5倍使用してきた。        
 ・3通りの抽出

○藍・茜:
 ・堅牢度が高い        
 ・染料と顔料の利用―型染めや手描き、混色が出来る。        
 ・植物の色の透明感
 ・沈澱藍の建染め:水洗回数が少ない廃液処理がしやすい

○ 虫こぶ・果実:
 ・繊維や色素、媒染の金属イオンと結合して難溶性に変え堅牢度を高める。
 ・植物は花にもタンニンがある。          
 ・紫外線から身を守るために植物はタンニンをもつ          
 ・果実や木の実の中には、抽出液を酸性に変え、色素吸着と発色を良くするものがある。

○クサギ・キハダ:
 ・同じ無媒染の黄檗とクサギを混ぜて使うと堅牢度が上がる。          
 ・ ・親油性で界面活性作用をもつクサギ。          
 ・染色後は色素は水に戻らない。          
 ・黄檗と楮や麻の抗菌作用の利用―黄檗紙、衣類の保存用風呂敷にいかされている。 

国際天然染料シンポジウムと展覧会(International Simposium &Exhibition on Natural Dyes Europe)が来年4月にフランスで開催されます。天然色素の活用と栽培、歴史 的・植物学・農学的・化学的側面を含む学術的なアプローチを用いて工業的・ 経済的に実現可能な植物色素について等が議論されます。 化学染料を用いるようになってまだ160年足らずです。それまでは世界中 の人々は天然染料を使っていました。化学染料と天然染料は対立するものではなく補完し合うものだと思います。世界の各地にまだ天然染料の原料や製法、染色方法が残っているうちに、お互い情報交換し、それを絶やさず、残し、伝えていきたいものです。幸い多くの人が目を向けるようになってきているのは喜ばしいことです。テキスタイルを通してこれからの地球環境を考え、共存共栄していけるものと信じています。