イベント

イベントレポート

giftshow2010
 
「布の力、命の布を考える。—東北大震災が問いかけるもの—」

基調講演にお迎えしたのは、京都「風工房」を主宰する染色作家の斎藤洋氏です。

斎藤氏は横浜生まれで、1971年から京都で染めを始める。刷毛染めの作品を国内外の多くの場所で発表している。また長い布を野外に張り、色を楽しみながら大勢で一気に染める「野染め」や「エイズメモリアルキルト」などの活動を続けている。

昨年3月11日のあの未曾有の東日本大震災がおこり、翌4月から斎藤氏の三陸を巡る長い旅が始まる。京都と三陸のギャラリーを繋げないかという思いがあり現地入りする。そこで見たあまりにも悲惨な光景に愕然とした。罹災された人たちと共に野染めをしようと動き始めると各地で共感を呼ぶ。次第にそれが大きな支援活動の輪となって広がりをみせていく。 みんなで野染めした布をカットしてパッチワークキルトにするという工程は、なくなられた人を思う時間と場所の共有にもなる。布と縫う道具があればキルトはできるのだが、針や糸もない状況。そこで、お針箱のようなセットにして送って欲しい とホームページなどで呼びかけ、集まった1、000箱あまりを避難所、作業所、保育園、ケアホームへ布といっしょに届けて回る。すると手を動かす喜びと会話を取り戻し、こもりがちな生活に活気や沢山の笑顔を生むことにもなった。

岩手県南部で「てびら」は蝶々、「つぎ」は布を表すそうです。野染めをした布に白い蝶々の舞うキルト「てびらこつぎっこ」は、思いを持つ人と現地の人の間を行ったり来たりする中で生まれた癒しと希望の布です。まさしく命の布と言えます。 野染めした20メートルぐらいの生地と、手作りの本の表紙やぬいぐるみ、フラワー、バッグ、ベストなどの製品をお持ち頂き会場いっぱいに広げて見せて頂く。 人は自然の毛・綿・絹を染めて織って布にする。切って縫って作ったものたちと共に生活をする。生活に寄り添う布、人の心に寄り添う布の力の大きさを改めて確信する。実際に現地に入り活動を続けている斎藤氏のお話は、布を鮮やかな色で野染めするかのようにみんなの心に染み込んでいく。そんな静かで輝く感動を胸に、私たちも被災された東北の方々に心を寄せ続けたいと思う。

 

一般社団法人日本テキスタイルデザイン協会通常総会

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