イベント

イベントレポート

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期間 2012/8/21-8/24
参加者 木下幸子 奈良平宣子

【行程】
8/21(火)
  [JR]7:06 京都(奈良平)- 7:41 名古屋(木下) - 9:23 東京 9:40 - 12:40 新花巻  
  [レンターカー]新花巻 橋田さん(メモリアルキルトジャパン)と合流 14:00- 14:15
          るんびにい美術館 15:15 – 15:30 宮沢賢治記念館16:30 – 18:30 釜石駅
         (斎藤グループと合流)19:00- 19:45浪板交流センター 泊

8/22(水)
  浪板交流センター 8:00 – 8:30 BELL GARDIA 鯨山 9:30 – 10:00 大槌町 サンガ岩手
  14:30 – 15:00 大槌町 わらび学園 16:30 – 18:00 田老町ちくちくの会ゆいとり
  18:30 – 19:30 田野畑村 ハックの家 泊

8/23(木)
  ハックの家 8:00 – 10:00 久慈 拓陽支援学校14:00 – 16:00 八戸
  JR 八戸 18:01 -21:08 東京 21:08 – 22:56 名古屋 -23:31 京都 

【夏の終わりの三陸野染旅 参加メンバー】
    齋藤洋 寺元健二 澤畑明見 田島信二(風の布・パピヨン)
    橋田智子(メモリアルキルトジャパン)
    越前純子(インテリアコーディネーター)
    木下幸子 奈良平宣子(TDA)


 
田老町    
 
初めに

―夏の終わりの三陸野染め旅―

風の布・パピヨン 齋藤洋さん一行の企画に合流させていただき盛岡県を釜石から久慈まで視察してきました。震災が起きた直後から東北のことを思いつつ,あまりに想像を絶する悲惨な状況に、自分のできることが見つけられずに1年以上が過ぎました。TDA講演会に斎藤洋さんをお招きして東北の支援活動をお聞きししたことを機に、TDAの活動として何かできるのではないかと考え、先ずは東北に行かなければと強く思い、今回視察に行ってきました。

 
視察先


(1)8/21
るんびにい美術館
花巻市にあり、知的障害者アトリエと美術館、ショップ、カフェを運営しています。アトリエでは、障害者の方が元気に案内してくれました。絵画、織、刺繍、陶芸等を制作、2010年にパリで開催されたアール・ブリュト展にも作品を出品しています。ギャラリーでは、 企画展 ―往き交う命― 大西暢夫写真展が開催されていました。大西氏は震災以降600キロに及ぶ沿岸地域を撮影されています。写真は、深刻な現実を伝え、深く心に残る涙をさそう作品でした。

(2)8/22
BELL GARDIA ベルガーディア鯨山

ガーデンデザイナーの佐々木 格さんは、奥様とともに東日本大震災のあと、自宅の庭「ベルガーディア鯨山」の海を望むガーデンに、会えなくなってしまった人に思いを伝えるための電話ボックス「風の電話」や、地域の子どもたちが自然の中でゆっくりと本を読むことができる「森の図書館」をつくられました。これらは、震災によって傷ついた人々の心をいやす場になっています。さまざまな復興活動が行われる中、「こころの復興支援」をされています。

自然豊かな森を背景にした四季の花が咲く手入れの行き届いた庭園は、震災が無かったかのように平和で美しく私たちも癒されました。けれども、風の電話を訪れる人々のことを思うと心が痛みます。
  
支援について

図書館の本は十分あります。周りの森をもう少し整備して子供達が遊べる場を創ろうとされています。ボランティアも入っておられます。岩手県を訪れることがあれば是非訪問してください。


 
「風の電話」とガーデン   図書館と佐々木 格さん
 

(3)8/22サンガ岩手

吉田律子さんは、人々が大震災で想像を絶する被害を受け、絶望的な悲痛な叫びの中、バラバラに仮設で暮らす人達を針仕事や編み物など手仕事を共にすることで、心をつなぎ共に生き抜こうと考え、つくられたのがサンガ岩手です。

今年の7月1日からは、大槌町の国道沿いで、まだ周りは被災の跡も生々しい所に建っている建物の1階で「手作りカフェ」をオープンされました。カフェスペースと、支援で贈られたミシン5台に布や糸等の材料がある手作り工房と、ここに集まる人が制作した物を販売するショップがあります。

みんなが集まれる拠点となる場所ができたことは、大きな意味があり、遠いところからバスに乗りここに来ることを楽しみに皆さんが通っておられます。
各々が悲しい辛い思いを持ち、不自由な生活環境にもめげずこの場で、手作りプロジェクトを介して人と繋がり、ひと時のやすらぎを得ているようです。手作りカフェの責任者の川原畑さんは、手作りカフェに積極的に関わり、将来を見据えて何かをしたいとエネルギーいっぱいの、頼りになる存在です。吉田律子さんの広報力と実行力が素晴らしく、この拠点を開設できた原動力です。

サンガ岩手は視察先では一番時間をさいてミーティングしたところです。

【ミーティングの記録 10:00-14:30】

参加者:吉田律子、川原畑、手づくリプロジェクトのメンバー7名      
    山崎輝樹(岩手湾岸地区障害者を支援する会のメンバー)      
    齋藤洋、寺元健二,澤畑明見、田島信二、橋田智子      
    木下幸子、奈良平宣子

1、現状

 *支援の素材について     
  支援で来た素材は様々であり、必ずしも希望に添う物ばかりではない。     
  素材の質の良い物、目的に見合った物が欲しい     
  副素材(ファスナー、リボン、金具、ボタンなど)がない。地元では素材が無く盛岡まで買いに行く
 * アイデアの参考書や作り方の本が欲しい。
 * 手作り品の値段 2,000円以上の物は売れない。          
  持ってこられた手編みの帽子の値段¥300
 * 制作完成品のサンプルが欲しい
 * ポリエステルニットのジャージの生地が大量にあり、制作する物のアイデアがほしい
 * 今制作中のエプロンのデザインにアドバイスが欲しい
 * それぞれの制作物の改善点を求められる
 * 参加者の年齢層が高いので、若い感性を生かすためにも地元の高校生を巻き込むとよい。

2、今後

手作りを楽しんでいる人を尊重しつつも、サンガ岩手として特色のある製品の企画が必要である

新たな提案としての話し合い

 * 地域ごとの特色のある製品の企画をしなければならない ブランド化
 * 地域にある植物を使った草木染め(渋柿 あかざ 桑 栗 クルミ 雲丹など)
 * 四季に植物を採取して記録、染めのデータ化
 * この地域で仏事に使われているネコヤナギの芯、副産物の表皮を繊維素材として使えないか 
   ネコヤナギは生育も早い、収穫しやすい  
 *渋柿から柿渋をとる  
 *製品に限らず繊維素材として販売する ネコヤナギ、ウリハダカエデ
 *商品タグやパッケージ、ブランドストーリーが必要  
 *販路の提案

TDAのできる支援

サンガ岩手の手づくりプロジェクトはまだスタートしたばかりで,現在、懸命にどうすすむべきかを模索されている状況です。みんなに仕事をつくりたい気持ちと、製品作りを急ぐあまり、希望が多すぎて関わるのは難しい面もがあります。つながりと手作りを楽しむ人達を尊重しつつ、全体の制作物のレベルアップを目指さなければならないと思います。手づくり品は多種多様(鮭のオーナメント、フクロウ、チョッキ、バッグ、帽子,ガンバル象などなど)で手作りマーケットのイメージです。

プロジェクトに来ておられるおばあちゃんが、鮭のオーナメントがつくりたい。鮭は元の所に帰ってくるので、私たちも元住んでいた所に帰りたいので願いを込めて作っていると話しておれました。この話にはストーリー性があり、サンガ岩手の手づくり品の中で企画していけると思いました。近くにある高校生にフレッシュでモダンなアイデアを募集し、ストラップ等若い人向けた製品になると考えました。販売や企画でTDAが関われるのではないかと思います。

もう一つの線としてこの地独特の物を企画することに関しては、まだまだ計画のスタート地点であり、企画をつめ、調査も必要です。今後TDAが関われることも多々出てくるとは思いますが、斎藤洋氏、山崎輝樹氏中心に地元の動きや要求に、TDAとして柔軟に関わっていくことができれば良いと考えます。


 
吉田さんと手づくりメンバー    手つくりカフェの周辺

 
ショップ   手づくりカフェの建物
 

(4)8/22 協同作業所 わらび学園

田中静子さんが施設長をされている障害のある人の作業所です。大槌町の沿岸部から谷沿いに多数仮設住宅が並ぶ谷を通り抜けた山側にあり、本園は被害を免れましたが、沿岸にあった施設が全部津波で流され、施設の人達もバスごと流されたそうです。

仮設に住み自分の親族も失い、施設長として頑張っておられる田中さんの心労や、のしかかる重責は計り知れません。工房では布クラフトと製パン等をされておられます。12月に大阪で開催されるクラフトの展示会に向けて、布のクラフト野菜を制作中です。製パンの方は新しいアイデアのパンが次々と試作されていて、順調で販売も拡大されて安定してきているようです。田中静子さんは発想も良くクラフトセンスのある方で、制作されているモノはデザインセンスある微笑ましい布クラフトでした。

TDAのできる支援

 *布,糸など素材の提供
 * 販路の提案


 
作品展に向けての準備   てびらっこつぎっこ
 

(5)8/22 グリーンピア田老仮設 チクチクの会 ゆいとり

10メートルの防波堤を超えた津波で町の大半が壊滅した田老町の人が住む仮設で大棒レオ子さんが中心に針仕事のクラフトが創られている。今の悩みはみんなが集まる拠点が無く、仮設の集会所もなかなか使えず、狭い仮設住宅で材料さえ保管するのが難しい状態です。こんな状況にもめげず、オリジナリティーがあるクラフトセンスあふれる物を制作されています。

今回は斎藤さん達がお針箱を届け地域の高校生に配布され、高校生も巻き込みチクチクの会を展開しょうとしています。草履の小銭入れ、木の薄板クラフト等制作中です。。

TDAのできる支援

 *材料支援は、材料を置く場所も侭ならないので、必要に応じて要求を聞く必要がある。
 *販路の提案


 
草履の小銭入れ   野染のバック
 

(6)8/22 NPO法人 ハックの家

田野畑村にある、竹下美枝子さんが施設長で娘の敦子さん家族とともに頑張っておられる、障害者の福祉作業所です。

裂き織り工房、カフェ、パン工房があります。震災後は学童や保育の施設がなくなり、行く場の無い子供達も預かっておられます。若いボランティアも活動しており、とても活気ある工房です。竹下さん家族の暖かい心と秘められた忍耐とエネルギーは、素晴らしい工房の雰囲気を創りだしていました。

裂き織りの布は美しく色のセンスも良く、工房でつくられているカバンやポーチ等は、コンセプトもはっきりして、縫製や仕上げがしっかりとして、ブランドタグもつくられ販売を意識した、完成度の高いものでした。また絵画は色も明るくきれいで表現も素晴らしいものでした。プリントデザインとして布にならないかと思います

滞在中の話し合いとして、バック等の仕上げの詳細な方法や簡素化、製品にみあった適正な価格、販売の場です。

TDAのできる支援

*素材 (着物の布切 織りの縦糸 裏地 カバンの把手 ファスナー等)提供
 *販路の提案


 
鉄道や海等の絵画   ハックの家の竹下美枝子さん

 
裂き織のポーチ,携帯ケース等   商品タグ
 

(7)8/23 (木) 岩手県久慈拓陽支援学校

今日は齋藤洋氏がされる久慈拓陽支援学校野染めのワークショップに参加しました。この学校は小学生、中学生、高校生あわせて70名あまりが通う障害者の学校です。

当日は夏の青空が広がる炎天下、とても暑い日でした。
校庭に張られた30mの白い布2枚、こんな大きな布にバケツにつくられた染料に太い刷毛を浸け、思い切り描くのはみんな楽しそうです。最初は遠慮がちに刷毛を走らせていましたが最後は大胆に生き生きと作業する子供達は、私たちの心を暖かくしてくれます。みんなと出会えここに来て良かったと思いました。染料が混じりあい微妙な色合いが出来て美しい色合いの布が青い空をバックに翻りました。齋藤洋さんたちが続けてこられたこのワークショップは出来上がっていく美しい色合いの布を見るだけでもわくわくします。


 
     

 
     
 
最後に

それぞれの訪問先の項目でTDAができる支援の可能性を述べましたが、これからTDAとして検討して長い期間をこの人々と関わっていってほしいと思います。 震災に遭遇し今までの仕事や暮らしを失い、人間本来の生き甲斐である手づくり心に光を見つけ励みとして頑張っておられるお母さんたちに出会い、東北の手間ひま惜しまぬ技術とクラフトセンスある品々を、その素晴らしい価値に見合った販路を見つけることが共通の必要性です。

—夏の終わりの三陸野染旅—に合流しわずか2泊3日の視察の旅でしたが、風の布・パピヨン齋藤洋さんたち一行のお陰で、本当に意義深い充実した視察となりました。 齋藤洋さんをはじめ、風の布・パピヨン夏の終わり三陸野染めの旅に同行された皆さん、東北で出会った全ての人に心より深く感謝申し上げます。

ハックの家の前で全員集合